学際ネットワーク 展示会レポート

世界最大の国際金属加工見本市「エモ ハノーバー2011」

――ドイツの工作機械が中心、日本勢も存在感示す――

記事投稿者: 小山 宏(雑誌「機械と工具」編集長(日本工業出版))




「エモ ハノーバー2011:EMO Hannover2011」(通称:エモショー)が、9月19日から24日の6日間にわたり、ドイツ・ハノーバー市のハノーバーエキジビションセンターで開催された(主催:ドイツ工作機械工業会:VDF)。

「エモショー」は、2年に1回、欧州で開催され、JIMTOF(日本国際工作機械見本市)、IMTS(米国国際工作機械見本市)と並ぶ世界の3大工作機械見本市と位置づけられている。今回「エモハノーバー2011」では、リーマン・ショック以前の2007年に、やはりハノーバーで開催された「エモハノーバー2007」の実績、出展社数2,120社(42か国)、入場者数16万6,500名には及ばないものの、出展者数2,037社(41か国)、入場者数約14万人(100か国以上)を記録、前回の「エモミラノ2009」の入場者数12万4,660名を大きく上回わり、景気の回復を印象つけた。
 国別に見た出展者数では、地元ドイツが全体の4割を占めたが、台湾が152社、中国98社、日本75社、韓国38社と、東アジアの国々の進出が目立った。

工作機械の生産、消費にで、数字の上では中国が世界のトップとなったが、最新の技術開発動向を発表する場としては、世界的にも「エモ」の注目度が一番高い。もちろん、工作機械技術をリードするドイツで行われる見本市で、ドイツのメーカーが多数出展することもあるが、世界の工作機械技術開発でドイツと並ぶ日本からも、今回75社が出展するなど、優秀な工作機械および周辺技術が結集するのが「エモショー」である。

「エモハノーバー2011」の舞台であるハノーバー国際見本市会場は、全体面積が100万m2、屋内の展示面積は26展示館合計で4万6,100m2。これは世界最大規模。今回の「エモ ハノーバー2011」では、そのうち16の展示館が使用された。広大な会場には、2種の巡回バスがひっきりなしに会場を回って、見学者の便宜を図っている。
高付加価値加工実現のため、ここ数年5軸加工機、複合加工機が集めているが、今回の展示でもそれらが中心であった。欧州では、日本より先んじて5軸加工機が浸透している。今回も、より成熟した製品が並んだ。

以下に、欧州の工作機械・技術に絞って紹介する。







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(1) 日本国内でもファンを獲得しつつある5軸マシニングセンタメーカーのHERMLE社(ドイツ)は、独特の設計思想と、ミネラルキャストの本体で知られる。ドイツ国内でも高精度な加工に使用されている。
今回は旋削機能も持つ大型5軸マシニングセンタ「C60U MT」で,歯車加工を実演,注目を集めた。




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(2)  GROB社(ドイツ)は、5軸マシニングセンタ「G550」を展示。
横型主軸は、前後(Z軸)および左右(X軸)に可動,ワークを載せた片持ち回転テーブルが上下方向(Y軸)に動く。そのため自由度が大きく、ワークを逆さまな状態で加工することも可能としている。その早さと動きのユニークさで見学者の注目を集めた。X,Y,Z各軸移動量:800×950×1,020mm、X,Y,Z各軸早送り:65/50/80m/min、主軸:HSK-A63、1万2,000回転。




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(3)  EMCO社(オーストリア)は、オーストリア、ドイツ、イタリアに工場を持ち、欧州を中心の実績を持つ工作機械メーカー。今回は5軸マシニングセンタ「MAXXMILL 500」を展示した。
回転テーブルを片持ちで傾けるという,ドイツ製小型マシニングセンタによく見られる機構を採用。最大ワークは500×500×500mm。




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(4)  roders tec社(ドイツ)は、1991年から、金型加工向けに高速加工機(主軸:4万2,000回転)を供給しているマシニングセンタメーカー。
写真は、各軸移動量X,Y,Z:1,000×1,050×600mm、最大加工物重量2,000kgという中物ワークに対応する同時5軸マシニングセンタ「RXU 1200 DSH」。主軸はHSK F63、3万回転。




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(5)  KERN社(ドイツ)は、高速・高精度5軸マシニングセンタの新機種「Micro New」を展示。
主軸は5万回転。立形で円テーブルを片持ちで傾け,自由度が高い。NC装置は「ハイデンハインiTNC530」。最大209本のATCを用意して多様なニーズに対応する。




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(6)  EDEL社(ドイツ)は,グループ企業であるCyTec Systems社のユニバーサルヘッド、テーブルを取り入れた旋削機能を持つ5軸マシニングセンタ「ROTAMILL22」を出展。
主軸やテーブルなどの要素は多様な品揃えから選択でき,大形歯車、インペラ、タービンブレード、各種ケースなど、広い用途に対応する。




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(7)  GF Agiecharmilles社(スイス)は、小物精密金型加工などもターゲットにする5軸マシニングセンタ「MIKRON HPM 450U」を出展。
今回は金型ではなく医療機器部品=人工関節の加工を実演。人工関節の装着を示す模型を展示し,見学者を集めた。




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(8)  JIMTOF2010で,巨大な主軸頭を展示し,注目を集めたのがFpt社(イタリア)。今回は新型の5軸マシニングセンタ「Dino max」を展示した。
用途に応じて、3万2,000回転のものから高トルクのものまで、またさまざまなタイプのユニバーサルヘッドが選択できる。自動車ボディ用大形金型、風力発電用歯車をはじめ、さまざまなワークに対応する。ハイデンハイン製NC装置を搭載。




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(9)  STERLITAMAK社(ロシア)は、ロシア製としてはめずらしい5軸マシニングセンタ「S500」を展示。かつて,ロシアは大量の工作機械を製造していたが,現在、メーカー数は多くはない。
立形マシニングセンタがベースで、コラム移動型、チルトする回転テーブルを有するというオーソドックスな5軸マシン。NC装置にシーメンスを採用しているほか、欧州製の各要素を使用。各軸移動量X,Y,Z:600×480×450mm。主軸回転数は8,000回転。




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(10)  metrom社(ドイツ)は、今回の展示会でも出展の少なかったパラレルリンクマシン「P1000」を展示。
5本のボールねじが主軸を支え、また位置決めして,自由な加工を実現する。同様の機構を持ち運べるようにした「モバイルタイプ」も品揃えするなど、多様な構成を提案。




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(11)  実力ある工作機械メーカーとして知られるINDEX社(ドイツ)は、新型複合旋盤「R300」を展示。
同じ能力を持つ主軸(φ102mm,3,500min-1)を左右に,また同じ能力を持つ独立したミーリングスピンドル(9,000min-1)を上下に持ち,それぞれが5軸機と同様の仕事を行う。工具交換は,chip-to-chipで6秒。ロボットにより,連続無人加工を実現。自動車部品加工のほか,メディカル分野の加工にも最適。価格は約100万ユーロ。




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(12)  Chiron社(ドイツ)の小型マシニングセンタは,ユニークな高速工具交換機能で広く知られる。今回,中型の18シリーズにおいて同様の工具交換機能を搭載,注目を集めた。
また,新型の大型立形マシニングセンタ「BIG MILL」では,カバーを外して,ATCの配置など,そのユニークな設計を存分に見せつけている。




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(13)  GLOBAL TOOL GROUP(ドイツ)は,複数の企業がグループを形成してレトロフィット事業を行っている。環境意識の進んだドイツらしい。10年前のマシニングセンタと,レトロフィット後の同形機を並べて、技術力をアピール。自動車部品加工向け設備に実績をもつほか、グループとして、欧州のほか、米国、中国でも活動している。




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(14)  Fastems社(フィンランド)は、工作機械をはじめとした生産加工設備のシステム構築に実績を持つ。
今何が起こっているのか,これから何が行われる必要があるのかを、クリアな画像で現場オペレータから工場管理者まですべてのユーザーに情報提供する新しいFMS制御システム「MMS5」を展示し、注目された。




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(15)  ドイツには、自動車部品加工の専用工作機械メーカーも多い。SW社(ドイツ)もそのようなメーカーの一つ。2主軸を持つマシニングセンタを展示。当然ながら生産性は2倍。
欧州では,2主軸,4主軸タイプが多く見られ、同社も4軸タイプも品揃えしている。




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(16)  ジグ研削盤で知られるHAUSER社(オランダ)は、新しいCNCジグ研削盤「H45-400」を展示。
剛性を強化し,ミーリングも可能など,機能の向上を図った。日本ではモータ部品の加工などに活躍、そのほかより広い用途に対応する。




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(17)  工具研削盤メーカーのEWAG社(スイス)が今回展示したのがインサート専用の精密5軸レーザ加工機「LASER LINE」。
切削チップブレーカの加工,1番面,2番面の加工などに対応する。ピコ秒レーザ(50W)を使用。




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(18)  先端的な砥石メーカーとして知られるTYROLIT社(オーストリア)は、CFRPのボディにcBN砥粒を装着したホイール。軽量化と振動の影響を受けにくいことが大きな特長。高価だが、すでに実用化されている。




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